« 『魔女狩り人の復讐』 | メイン | 『妖精王の月』 »
2002年12月24日
『きつねのルナール』
レオポルド・ショヴォー編、山脇百合子訳『きつねのルナール』(福音館書店、2002年)
中世の叙事詩として有名な『狐物語』の中からいくつかの話を子ども向けに紹介した(おそらく編集した?)本です。私はちくま文庫の『ローランの歌/狐物語』に入っていたものしか読んだことがありませんが、その中には「子どもに読ませるのはちょっとなあ」という話がありました。当然そういうものは収録されていません。巻末には「国際動物叙事詩学会会長」という人の解説もあって、『狐物語』を知らない大人も楽しめます。そんな学会もあったのね、とびっくりです。
ストーリーは分かりやすく言うと、ずる賢いきつねのルナールが活躍したりいっぱい食わされたりする話です。複数のエピソード(枝篇)があります。中世の物語では珍しくないのですが、オリジナルのものというのはあまりなく、ストーリーは既存の物語のパロディで、それを書いたのも1人の作家ではありません。ルナールも相手も、読んでいてびっくりするくらい痛めつけられます。山脇百合子さんの挿絵が、現地取材されたということもあって、いい雰囲気です。おそらく100年くらい前も、フランスの田舎はこういう感じだったのかなあと思います。
解説では書かれていなかったのですが、成立の過程も気になります。いたずら者が主人公というと、『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』というのがあります。これは差別を受けていた作者が、やはり流れ者で差別を受ける存在のティル・オイレンシュピーゲルを主人公にしたものです。でも、『狐物語』はそういうものではありませんよね……。『ドン・ジョヴァンニ』もそうなのですが、いわゆるピカレスク小説を見ると、「なぜこういう人物を主人公にするのだろう」と思ってしまいます。
確かに、ルナールがいいことをしたのにそれを仇で返されて復讐するという話もありますが、「なんでそんなことをするんだろう」と思うような話もあるので……。
投稿者 Remi : 2002年12月24日 10:41
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.orpharion.com/blogcgi/mt-tb.cgi/106
