« 『きつねのルナール』 | メイン | 『夏の王』 »
2003年01月01日
『妖精王の月』
O.R.メリング著、井辻朱美訳『妖精王の月』(講談社、1995年)
カナダに暮らす少女グウェンは、アイルランドのダブリンで暮らすいとこのフィンダファーのもとを訪れます。別世界を探す旅に出たふたりは、まずタラを訪れます。『人質の墳墓』で夜を過ごした彼女たちのもとを、妖精王と妖精たちが訪れ、別世界へのあこがれが強いフィンダファーをさらって行ってしまいます。グウェンはフィンダファーを取り戻すべく、アイルランドを旅することになりました。妖精や、彼女の状況を理解し助けてくれる人々と出会い、助けられ、ときには妖精たちに邪魔されながら、グウェンはフェアリーランドと現実の世界を行き来します。旅を続けるうちに、フィンダファーがさらわれた理由が明らかになりました……。
これまで読んだメリングの作品と違い、グウェンは妖精たちの世界と現実の世界を行き来します。『歌う石』や『ドルイドの歌』のようにアイルランドの過去に行くというのも面白かったのですが、今回の設定のほうが、読者としては「ありそうでなさそう」という雰囲気で、身近に感じられるぶん、より「ファンタジー」らしいです。アイルランドに行ったことがないのですが、こうやって人々は妖精の存在を信じていて、妖精たちも人々の日常生活にスルリと入り込んでいるのかしら……? と思います。
最後に、原題にもなっている《狩人の月》ですが、それまでの展開からすると、もうちょっと色々あってもいいのかなあ……という印象です。結末は完全なハッピーエンドではありませんが、アンハッピーエンドでもないので、うまいところに着地したなあ、と思いました。
あと、グウェンが自分の白黒はっきりつける「アメリカ的(もしくは北米的)な」価値観に悩むところは、メリング自身の投影かな、とも思いました。
投稿者 Remi : 2003年01月01日 10:42
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.orpharion.com/blogcgi/mt-tb.cgi/107
