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2003年01月21日

* 『ミオよ 私のミオ』

アストリッド・リンドグレーン著、大塚勇三訳『ミオよ 私のミオ』(岩波少年文庫、2001年)

孤児のボッセは、養子として引き取られた家でも辛い思いをしていました。友人ベンカの家庭をうらやましく思い、自分の本当の父親は誰なのだろうと考えていました。ある日、ボッセは偶然助けた魔神に連れられて、「はるかな国」に向かいます。ボッセは実は「はるかな国」の王子ミオで、父親である「はるかな国」の王は、ミオが戻ってくるのを待ち望んでいました。父親である王や友人とともに過ごし、美しい日々を過ごしていたミオは、やがて自分の運命を知ります。ミオは、人々を苦しめる残酷な騎士カトーとの戦いに出発しました。

実はこれが、初めて読むリンドグレーンの作品です。物語全体から透明感が感じられ、「幻想的」という言葉がぴったりだと思いました。「お父さんの王さま」はあまり口数が多くはありませんが、慈愛に満ちています。穏やかで楽しい「はるかな国」に影を落とす残酷な騎士カトーとの戦いは、決して激しいものではありませんが、絶望的な雰囲気が支配しています。でも、その絶望にも、なぜか透明感が感じられました。ガラス細工のように繊細で美しい物語です。

投稿者 Remi : 08:12 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)

2003年01月20日

* 『ローワンと伝説の水晶』

エミリー・ロッダ著、さくまゆみこ訳『ローワンと伝説の水晶』(あすなろ書房、2002年)

リンの谷を、水の民マリスの使者が訪れます。彼らの宝である水晶を守る者、〈水晶の司〉の力が弱まっていて、新たな司をただちに選ばなければならないのです。そして、選ぶ役目を担っているのはリンの谷の者でした。ローワンは「選任役」とともにマリスの人々のもとに行きます。ローワンは自分たちだけでなく、マリスの人々の危機も救うことができるでしょうか。

やはりどんどんと世界が広がり、それとともにローワンも成長しているのが感じられます。特にものすごい能力があるわけでもない、ごく普通の子(どころか他の子よりもちょっと鈍い感じの子)が努力している姿を見るのは、同じようなごく普通の子ども(そういう子どもが世の中の圧倒的大多数だと思います)だけでなく、親の立場からしても嬉しいものなのだなあ、と思いました。しかも、最初の冒険では仲間がいたけれど、次は仲間と呼べる人がほとんどいない状態で、そして今回、仲間と呼べるのは「信じていいのか?」と疑わねばならない人々です。まあ、うまいこと本人のレベルアップに合わせて難易度も上がっていると言えます。でも、そんな状況でもローワンは一生懸命考えて、困難を乗り越えます。結局どんな仲間がいても、自分で考えて結論を出せるか、というのが大事なのですけれど。

次の物語では、とうとうゼバックが……? らしいので、リクエストした本が来るのを楽しみにしています。

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2003年01月18日

* 『クローディアの秘密』

E. L. カニグズバーグ著、松永ふみ子訳『クローディアの秘密』(岩波少年文庫、1975年初版)

古典的な名作だし、せっかく近所の図書館にあるのだから……と借りてきた本です。家出先がメトロポリタン美術館というのは、なかなか魅力的な考えだと思いました。実は同じ作者の『魔女ジェニファとわたし』は、小学生のときに「魔女の修行」というモチーフが気に入って、学校の図書館から数ヶ月借りっぱなしで読みふけっていた、思い出の本です。でもカニグズバーグの他の作品は、読んだことがありませんでした。

時代背景や訳が古くなってはいますが、それでも魅力的な本だと思います。クローディアは子どもにしては頭もよくいろいろと考えていますが、フランクワイラー夫人にはかなわないし。確かに、子どもが大人を出し抜いて活躍するのが面白いときもありますが、「オトナってそんなに知恵がまわらないかな?」などと考えてしまうくらい、大人がダメダメなこともありますから。大人の視点から読むと、子どもは子どもらしく、大人は大人らしく、それできちんとストーリーが進んでいるところがよいですね。

投稿者 Remi : 08:09 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)

2003年01月13日

* 『ローワンと黄金の谷の謎』

エミリー・ロッダ著、さくまゆみこ訳『ローワンと黄金の谷の謎』(あすなろ書房、2001年)

リンの谷に、〈旅の人〉がやって来ました。村人たちの中には、去年もやって来た彼らを好意的に見ない者もいます。特に今年は、山から持ち帰った貴重な作物のヤマイチゴが村にあるので、村人たちは〈旅の人〉を警戒していました。〈旅の人〉の態度も、なんとなく奇妙な感じがしました。〈賢い女〉シバから不気味な予言を聞いたローワンは、リンの谷の危機に立ち向かいます。

山から戻ったローワンは相変わらずの怖がりで、なんとなくほっとしました。それでも自分の知恵と勇気で困難を克服しようと努力するところに、彼の成長が感じられました。〈旅の人〉も本格的に登場し、前作ではリンの谷だけだった世界も、どんどんと広がります。この先はもっと大きな世界を舞台にするのでは……という期待が持てました。早速続きを図書館でリクエストしないと……。

投稿者 Remi : 15:10 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)

2003年01月12日

* 『ローワンと魔法の地図』

エミリー・ロッダ著、さくまゆみこ訳『ローワンと魔法の地図』(あすなろ書房、2000年)

リンの谷を流れる川の水が、急に枯れていきました。川の水しか飲まない家畜(バクシャー)たちが弱っていきます。それだけでなく、もちろん谷の人々の暮らしに関わる一大事でした。勇敢な谷の人々が、謎を解くために竜が住むという伝説のある、水源となる〈禁じられた山〉に行くことになりました。そして、村で一番怖がりで臆病な少年ローワンも、一行に加わらざるをえない事態になります。

よくある物語と異なって、主人公のローワンが、とてもではないが自分から危険を冒すタイプではないのが興味深く感じられました。最初に「この子がどんどん成長していくのだろうな」と期待しましたが、それは裏切られませんでした。村の人々も個性的です。旅で次々と出てくる難関は「冒険のステージ」で、そこでタイミングよくヒントが得られるアイテムがあるところは、RPGに似ていて、子どもにはとっつきやすいのではないかと思います。

投稿者 Remi : 15:08 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)

2003年01月02日

* 『夏の王』

O.R.メリング著、井辻朱美訳『夏の王』(講談社、2001年)

妖精の存在を信じていた少女オナーは、1年前、祖父母の住むアイルランドで命を落としました。彼女を理解できなかったことに責任を感じていた双子の姉のローレルは、再びアイルランドを訪れます。オナーが日記に書き残していた謎を明らかにしようとするローレルの前に、妖精が現れます。その妖精によると、オナーは〈夏至祭〉の前夜に最初のかがり火をともす〈夏の王〉を探そうとしていたけれど、それが果たせなかったために現実世界と妖精界の狭間にいるとのことでした。そして、彼女が妖精界に受け入れられるためには、その重要な役目をローレルが果たさなければならないのです。

ローレルはアイルランド北西部のアキル島で、海賊女王やワシの王、祖父母の通う教会の牧師の息子イアンに助けられながら、謎を解き明かしてゆきます。

これまでの物語と違い、本来相棒となるべきだったオナーはもう死んでしまい、ローレルのそばにはいられない、という設定が興味深く感じられました。ローレルにはオナーに対する負い目があって、それが重くのしかかっています。〈夏の王〉にまつわる謎だけでなく、ローレルがその重荷からどのように解放されるかというのも、物語の重要な要素になっています。『妖精王の月』とつながりのある部分もあるので、そちらを読んでからのほうがより楽しめると思います。

そして、『妖精王の月』にさらに時間を超えるという要素が加わり、ローレルもイアンも陰の部分に支配され、苦しめられているということが、この物語をさらに面白くしていると思います。誰もがハッピーになれる結末ではありませんが、そのため物語がより現実的になるように思います。

余談ですが、私はローレルよりも早く〈夏の王〉の正体に気づきました。あたりまえですが……。

投稿者 Remi : 15:06 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)

2003年01月01日

* 『妖精王の月』

O.R.メリング著、井辻朱美訳『妖精王の月』(講談社、1995年)

カナダに暮らす少女グウェンは、アイルランドのダブリンで暮らすいとこのフィンダファーのもとを訪れます。別世界を探す旅に出たふたりは、まずタラを訪れます。『人質の墳墓』で夜を過ごした彼女たちのもとを、妖精王と妖精たちが訪れ、別世界へのあこがれが強いフィンダファーをさらって行ってしまいます。グウェンはフィンダファーを取り戻すべく、アイルランドを旅することになりました。妖精や、彼女の状況を理解し助けてくれる人々と出会い、助けられ、ときには妖精たちに邪魔されながら、グウェンはフェアリーランドと現実の世界を行き来します。旅を続けるうちに、フィンダファーがさらわれた理由が明らかになりました……。

これまで読んだメリングの作品と違い、グウェンは妖精たちの世界と現実の世界を行き来します。『歌う石』や『ドルイドの歌』のようにアイルランドの過去に行くというのも面白かったのですが、今回の設定のほうが、読者としては「ありそうでなさそう」という雰囲気で、身近に感じられるぶん、より「ファンタジー」らしいです。アイルランドに行ったことがないのですが、こうやって人々は妖精の存在を信じていて、妖精たちも人々の日常生活にスルリと入り込んでいるのかしら……? と思います。

最後に、原題にもなっている《狩人の月》ですが、それまでの展開からすると、もうちょっと色々あってもいいのかなあ……という印象です。結末は完全なハッピーエンドではありませんが、アンハッピーエンドでもないので、うまいところに着地したなあ、と思いました。

あと、グウェンが自分の白黒はっきりつける「アメリカ的(もしくは北米的)な」価値観に悩むところは、メリング自身の投影かな、とも思いました。

投稿者 Remi : 10:42 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)