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2003年02月15日
『光をはこぶ娘』
O.R.メリング著、井辻朱美訳『光をはこぶ娘』(2002年、講談社)
11歳の少女ダーナは、アイルランド系カナダ人の父親とふたりで、アイルランドに暮らしていました。母親はダーナが3歳のときに行方不明になっています。父親がカナダで職を得たので、ダーナも一緒にアイルランドを離れ、カナダに移り住むことになりました。ですが、父親が彼女に何も言ってくれなかったこと、友人たちやアイルランドと別れなければならないことを、ダーナは不満に思います。父親は関係修復のために、ダーナを環境保護活動家たちがいる〈低地の谷〉に連れて行きます。そこでダーナは妖精の貴婦人に会い、「夏の国」が危機にあり、それを救うためのルーフ王への伝言を預かります。この使命を果たせば、母親に会える――ダーナは妖精の世界と人間の世界・過去と未来を旅しますが、その道のりは決して楽なものではありませんでした。
少し読んだところで表紙にある原題を見て、「ということはダーナは(以下ネタバレになるので略)……」と思っていたのですが、予想が当たりました。また同じパターンかと思っていたのですが、そこはこれまでのメリングの物語をうまく融合させた感じで、単なるワンパターンではないことに思わず感心してしまいました。プロなのだから、そういう「ひねり」というか「バリエーション」があって当たり前なのですが。やはりワンパターンではないなと思ったのが、これまではどの作品もアイルランドが舞台だったのが、この先広がりが感じられそうなところです。ただ、アイルランドの精霊たちの物語を、どうやって他の地を舞台にするかは気になるところです。『夏の王』との関連もあり、そうすると必然的に『妖精王の月』ともつながってくるでしょうから、これも楽しみです。
投稿者 Remi : 22:42 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
2003年02月09日
『レイチェルと魔導師の誓い』
クリフ・マクニッシュ著、金原瑞人・松山美保訳『レイチェルと魔導師の誓い』(2002年、理論社)
子どもたちの多くが魔法を操れるようになった地球。一方で、大魔女たちの星ウールの地下深くでは、大魔女たちが作り出した禍々しい生物、グリダが活動を始めました。グリダたちは大魔女を圧倒し、地球の子どもたちの情報を手に入れます。グリダは地球の子どもたちを利用しようと、魔導師だけでなく、ティミやレイチェルも捕らわれてしまいます。自分の不思議な力に悩むエリックは、グリダたちを倒す作戦を考えました。
読み進めるうちにテンションが下がってしまいました。『レイチェルと滅びの呪文』で感じたあの絶望感は、どこに行ってしまったのでしょう。Amazon.co.jpでの読者の評価は高いのですが、私の趣味には合わなかったようです。それと、なんだか「お話」が「キレイ」すぎると思います。こうやって終わられると、「ああ、そうですかー、よかったですねー、がんばってねー、ぱちぱち(拍手)」としか私は言いようがありません。
私がもしも小学生だったら、オトナの目も意識して、読書感想文には「これから○○と△△が世界をよりよい方向に変えるのだと思うと、希望が感じられます」みたいなことを書くかもしれませんが、この年齢になったらそんなこと書く気になれません。何がテンションを下げてしまったかと考えると、「誰かが何とかしてくれる」ところです。1巻では先入観がなかったので「レイチェルは、もしかしてドラグウェナの手下になっちゃうのかなあ」などとハラハラドキドキで読んでいました。それ以降は、確かに先は見えないものの、まあなんとかなるんでしょう、という気持ちがあって、何が起こっても驚かなくなってしまいました。こうやって書いているううちに、"Deus ex machina"という言葉を思い出しました。
投稿者 Remi : 22:39 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
『アンブラと4人の王子』
アン・ローレンス著、金原瑞人訳『アンブラと4人の王子』(2002年、偕成社)
優れた王が治めるエバーニアの隣国には、老女公の治めるベルガモット公国がありました。同じ年の夏にエバーニア王が、冬にベルガモット女公が亡くなり、エバーニアは4人の王子が分割して統治し、ベルガモットは亡くなった女公の孫娘である、17歳のアンブラが統治することになります。アンブラはエバーニアの王子たちから芸術・学問・政治を学び、よき統治者となるべく努力します。やがて……(以下説明がややこしいので略)。
アンブラ自身の能力もありますが、優れた部下に恵まれていたのも彼女の幸運でしょう。これも才能と言えますけれど……。書かれたのは意外と昔なのですが、主人公であるお姫さま(アンブラ)は、きれいな服を着て深窓の令嬢として暮らすわけではなく、小さいながらも自分の国を統治しなければなりません。そういうところが古さを感じさせず、楽しんで読める理由かもしれないと思いました。エバーニアの4人の王子たちもそれぞれ個性的で魅力的なので、そういう面で楽しむ人もいるのではないでしょうか。
大きな冒険があるわけではありませんが、色々と考えさせられます。作品を読むと、作者の知識の深さが分かりますね。それにしても、「ヴァージナル」や「ヴィオール」、「フラウト・トラヴェルソ」があたりまえのように登場するとは、さすがイギリスです。ただ、「ヴ」表記の問題か、「バージナル」や「バス・ビオール」というように書いてありました。個人的にそれがちょっと残念です。
投稿者 Remi : 22:36 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
2003年02月07日
『レイチェルと魔法の匂い』
クリフ・マクニッシュ著、金原瑞人訳『レイチェルと魔法の匂い』(2001年、理論社)
ウール星を支配する女王、そしてドラグウェナの母親でもあるヒーブラは、ドラグウェナの死を知りました。そして、魔導師ラープスケンジャとレイチェルたちを倒す計略を練ります。地球にやって来た恐ろしい魔女たちは、見込みのある子どもを集めて軍隊を組織しました。ラープスケンジャが地球以外でのできごとに取り組んでいる間に、レイチェルたちを襲わせます。
独特の雰囲気に慣れてしまったからか、きちんと身構えて読んだからか、実は恐ろしさがちょっと物足りませんでした。ドラグウェナの残虐さに比べたら、その点でヒーブラのスケールが小さいです! 私がそっち方面を期待しすぎなのかもしれませんけれど。ちょっとでも失敗したら、見せしめに八つ裂きにでもされるのではないかとハラハラしていました。まあ、利用し尽くすだけし尽くそうというのは恐ろしいと言えば言えます。でも、もっとスプラッターなのを想像していただけに、拍子抜けしてしまいました。よく考えたら、そんなことをしたら児童書の範疇を超えてしまいますけれど。
ママもパパも、レイチェルとエリック以外の客人(と言うべきか……)を受け入れ、2人の変化にも対応できているところが、不思議な感じです。以前読んだ新聞のマンガ評みたいなもので、『カードキャプターさくら』の冒頭が、いきなりクロウカード(でしたっけ)を手に入れるための戦いで始まっていることを、「この年代の子どもたちには、『なぜ』という説明がなくても受け入れられる」というように書いていたのを思い出しました。私はそんなに若くないので、前作から時間が経っていても、もうちょっと説明が欲しいです。
今回も結末で、あっと驚く大展開がありました。次に何が起こるのか、楽しみです。ちなみに私が一番気になっているのは、若年寄さんです(と書けば分かる人には分かるかな)。
投稿者 Remi : 10:37 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
2003年02月05日
『ローワンとゼバックの黒い影』
エミリー・ロッダ著、さくまゆみこ訳『ローワンとゼバックの黒い影』(2002年、あすなろ書房)
リンの谷では、ローワンの母ジラーと、ストロング・ジョンの婚礼が行われました。しかし、ゼバックが放った恐ろしい怪物が現れます。それはリンの谷の人々だけでなく、〈旅の人〉やマリスの民にとっても、災厄――ゼバックの襲来――を予感させるものでした。ローワンは仲間とともに、不気味な怪物を追ってゼバックの都に向かいます。恐ろしいゼバックの都で、リンの谷の人々をめぐる歴史が明らかになりました。
思ったとおり、1日で読み終えてしまいました。ローワンはローワンなりに勇気を持っています。それも向こう見ずな勇気ではなく、よく考えたすえに前進します。前回も書きましたが、読者としての視点だけでなく、子どもを見守る親??の視点からも安心して見ていられるのが、この物語のよさです。今回はこれまでなかった出来事(ストーリーの内容に関わるので、具体的には書かないのですが……)がありましたが、ローワンはそれも乗り越えて進む勇気を持ち合わせています。子どもが共感しながら読んで、成長できる話だなあ、としみじみ思います。
こうやって主要な世界が明らかになると、次はどんな展開が待っているのかな? と、楽しみです。
投稿者 Remi : 10:35 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
2003年02月02日
『レイチェルと滅びの呪文』
クリフ・マクニッシュ著、金原瑞人訳『レイチェルと滅びの呪文』(2001年、理論社)
恐ろしく強力な魔女ドラグウェナによって、レイチェルとエリックの姉弟は、ドラグウェナの支配する暗黒の星イスレアに連れ去られました。この星では、あらゆるものが彼女の玩具のようにもてあそばれ、抑圧されていました。地球から何人もの子供たちがさらわれ、彼女の望む存在ではないと分かると殺されたり、奴隷にされたりしていたのです。
レイチェルはドラグウェナが驚くほどの魔法に対する才能を示し、エリックも魔法に関する不思議な能力があることが分かりました。姉弟を自分の欲望を実現させるための駒に使おうと考えるドラグウェナに対し、レイチェルがイスレアを救う伝説の「希望の子」だと信じる者たちが立ち上がりました。ですが、ドラグウェナの力は圧倒的でした。
『ダレン・シャン』が苦手な方もいらっしゃると思いますが、私はこちらのほうが苦手です。もう、とにかくドラグウェナが強すぎて強すぎて、「勝ち目はないな」と思ってしまうほどです。先を読もうと思っても、気が重くなって進めない――とまで書いたら大げさかもしれませんが、読むのに気合(と勇気)が要りました。ホラー映画などを見ていて、「この人もうすぐ殺されてしまうんじゃないかしら……」と思いながらもついつい見てしまう、というところです。
次巻以降の彼女たちの活躍に期待しています。
投稿者 Remi : 10:32 | トラックバック | 本の虫(読書の記録・絵本と児童文学)
